仏教の葬送儀礼に際して戒名の授与が行われます。伝統仏教各宗派により考え方や形式は
その宗派の特色があり様々です。こと天台宗に於いては三宝に帰依し俗世から仏界に赴くに際し戒名をお授けしております。
戒の名前ですのでまさに戒律を授かる儀礼が伴います。それにはまず起源を理解しなくてはなりません。
僧侶が得度(仏門に入ること)に際し法名を授かります。これには三帰三境と言いまして仏と仏の教えと僧に帰依しますと誓います。
また、その誓願が未来永劫であることを表します。それに加え十戒という戒を授かります。
その先に天台宗の僧侶には円頓戒とゆう十の重い戒律と四十八の軽い戒を授かる儀礼があります。
在家(出家した僧侶に対して出家せずに仏教に帰依する信者のこと)については五戒といい五つの戒律を授かることになります。
法名は私なら快彰(かいしょう)と音読みになり、これが僧侶としての名前となります。本来は出家ですので姓は捨てて
法名のみ名乗るのが本義ではありますが現代は社会通念上姓名を名乗るのが通例となっています。
又は、中国の高僧である道安禅師の説として仏家は皆釈迦の弟子なので釈(釋)(しゃく)を名乗るのがよい
という説をとり例えば釋快彰などと姓名を名乗る僧侶もいます。浄土真宗の戒名に釋が付くのはここに由来があると思われます。
戒律の詳細はまた戒律について書きたいと思います。
勘違いする方がいますがこの法名と戒名はまた別のものであり、法名を授かったから戒名はいらないのでは無く新たに授かる必要があります。
天台宗の戒名は大きく三種類あります。
○○院○○○○居士(コジ)又は(大姉ダイシ)
○○○○居士(大姉)
○○○○信士(シンジ)(信女シンニョ)
となります。
院とは場所を表し宮中の○○院などが期限とされています。院居士戒名は当初皇族など限られた立場の方のみが使うことができました後に
高い地位に在った方や会社の役員様などにも使われるように移り変わりました。
仏典の教えや故事、漢詩から格式高いその人にふさわしい院号をお付けします。
居士大姉は長者を意味し仏教を信じる信者であり仏教教団を経済的に支援する外護者を意味します。
維摩居士と言う在家(出家せずに一般家庭で日常生活をしながら仏道修行し仏教の教えを実践する生活をおくる人のこと)
に居ながら悟りの境地を得てお釈迦のお弟子もその智慧には及ばなかったと維摩経に説かれます。
その維摩居士にあやかり居士を贈ります。とても貴い位であり高徳の人物を表します。
信士信女は仏法を信じる清浄なる信者であることを表します。一般的な戒名となります。
戒名の位は家のご先祖様に習うのがよいと考えらえています。また夫婦の位は揃えるのが望ましいです。
特に会社の創業者の方や特に功績のある方は院号などを付けることに意義はあると思われます。
また、特に感謝を表したいなどのご希望が在れば居士大姉を贈るのもよいかと思われます。
故人様の考えやご遺族のお考えも拝聴してお話しますので一度相談してください。
戒名料がよく話題になりますが、そのお寺や地域の慣習、決まりなどがあり一概には言えません。
そもそも戒名は私が習ったところではそもそも生前にお寺に寄進など貢献された故人に対してお寺が感謝を込めて贈るのが始まりとされています。
戒名料とは昔はお寺を支える檀家さんが生前お寺に喜捨しお寺のお手伝いなどをして長年尽くしてこられたことに対してお寺側が感謝を込めて贈ったのが
始まりです。それが時代によりお寺と檀家さんの付き合いが希薄になり普段お寺に行かず寄進や貢献が無くなり信徒さんとしては
お寺さんに申し訳ないと言う意味もあり、在家信者として功徳を積む機会が減ったので他界して仏界に旅立つ上で功徳を積む意味を込めてお布施するように
なったのが戒名料の始まりです。それが戦後バブル期に家の見栄やお寺の都合で歪められ高い位をお金で買うような感覚になってしまったのが嘆かわしい限りです。
そこは是正して本来の意義に立ち返らなくてはならないと思います。
お布施に付いて真実の処を後日改めて書いておこうと思います。
また、重要なことでありますが最近の宗教学者が戒名は歴史が無いや自分で付けられるなどと主張していますが誤りですのでご注意ください。
宗教者や宗教学者が自身の売名やお金のために事実を歪曲して自分の利益になるように間違った歴史や教義解釈を伝えることが在るのは
とても残念なことです。宗教者ならば神仏の教えを正しく伝える責務があります。たとえ自身の不利益や立場を悪くことで在っても真実を伝えることに
誇りと矜持を持って生きる信念が何より重要なことです。入門時に誓ったはずです。初心の志を忘れずに貫いて頂きたいものです。
死後に戒名授かる風習は歴史的には少なくとも室町時代には遡り江戸時代には一般的でした。これは茶道華道の成立期より古い歴史です。
また戒名は三宝に帰依し師から弟子へと釈尊から歴代絶えること無く連綿とつながり継承してきた極めて重要な授かりものです。
受戒の儀式が重要なので当然住職で無くては授けられません。
そのため戒名は必ず正当な宗派の正当なお寺の継承が正しいご住職から授かってください。檀家の方はそのお寺のご住職にご相談する習いです。
また、生前戒名と言うものがありますがご子息に負担をかけずご自身が安心できるならご相談したらよいかと思います。
最初の二文字は道号と申しましてその人の人となりを表します。次の二文字は戒名と申しまして仏教的な意味を表します。
道号二文字目には基本的には実字を使います。実字とは山など実際に在るものなどです。実字の解釈は様々あり一概には言えません。
戒名には故人様の名前から一字頂くことが通例であります(必ずでは無いです)
その他には院殿大居士、院殿居士、院清居士、院清信士などの位、童子、童女(ドウジ、ドウジョ)孩子、孩女、(ガイシ、ガイニョ)
嬰児、嬰女(エイジ、エイニョ)など、又この他にも宗派により様々な形式があります。
戒名は様々ありますが、家のご先祖や故人の功績や故人への感謝を表す為に残された遺族からの贈り名として存在します。
私は戒名は生前の名前以上に大切な名前だと考えています。この世に生まれご両親から健康に幸せに育って欲しいと願いを込めて名前はご両親から授かります。
人生を全うして仏の世界、ご先祖様の世界に赴くうえで仏縁を授かります。生前と申しますが、生まれる前、仏の世界に新たに生まれ変わる入学式が葬儀です。
百年と生きられるのは希でよほどの徳が無ければ難しいものです。しかしご先祖様の世界で永劫に安らかであることを願い授かる戒名は故人様にとって
遙かに意義のあるものであると考えております。
そのため、私も戒名授与に際して、ご親族様に故人のお人柄やご趣味生き様、仕事や人付き合いご家族との思い出など拝聴しその方の人柄や生き様を表現し
格式高い戒名となるよう努めております。その戒名は永く仏壇に祀られ毎日手を合わせ故人様を偲ぶ貴いお名前です。そのことを常に想像し
故人様の魂魄が安らかであるよう、残されたご遺族のお気持ちが和らぐようにと願いながら何度も思案しながら作成しております。
それが戒名の意義であると考えております。
そのためただ戒名は付けることに意義があるのでは無く、釈尊から続く正当な導師から仏縁を頂く、戒律を授かり仏の弟子となることに意義があります。
そのお授けの作法が通夜又は状況に応じて葬儀にて行われます。
特に天台宗では戒名はお寺の名前でお授けしますので、比叡山延暦寺を本山とする包括宗教法人の住職、
又は宗派が認める比叡山延暦寺を本山とする非法人の代表役員である住職だけが授けることができます。
ちなみに天台宗と言えるのは比叡山延暦寺を本山とする山門派のお寺に限られます。
その他にも園城寺を本山とする天台寺門宗、西教寺を本山とする天台真盛宗などがあります。
さらに追善菩提としてお寺が存続する限りその戒名はそのお寺の住職のお弟子さんです。
ご縁がある御仏として永続的に祀られ供養の対象となります。
また、位牌の作成方法などについても改めて書きます。
以上戒名について書いてみましたが不安なことや疑問など在りましたらお問い合わせ頂けましたら可能な範囲でお答えしたいと思います。
よろしくお願い致します。 合掌
天台宗貴石山千眼寺 住職快彰 九拝
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